〈弐瓶勉の世界〉を時系列で読む


弐瓶勉作品のワンワールド


弐瓶勉作品といえば、SF、廃墟、むき出しの配管、地下世界、グロい人体改造、生死のあいまいさ、究極のネット世界、珪素生物、奇居子/ガウナ……
ガウナとはどこから来たのか。東亜重工の関わりはいつから始まったのか。そもそも地球はどうなった?……何度も読んでいるくせに何もわかっていない私の疑問ははたして解けるのでしょうか。今回はじっくりなめるように読んで、その謎の解明に取り掛かりたいと思います。

弐瓶勉漫画

弐瓶勉作品を時系列で読む

弐瓶勉作品は流し読みでは到底理解できない難解な世界です。
そこが醍醐味でもありますが、まずは発行順ではなく時系列で読んで…と思ったら、読む順番からして分からず、ここはひとつ調べがてらにレポート風にまとめてみることにしました。


【時系列順】

1.バイオメガ
2.アバラ
3.NOiSE
4.BLAME!
5.人形の国
6.シドニアの騎士



1.BIOMEGA バイオメガ


火星入植跡を探査していた宇宙飛行士たちは、ウィルス〈N5S〉に感染。
宇宙飛行士経由で地球全体もウィルスに侵されてしまった。
これは〈技術文化遺産復興財団・DRF〉による【人類総改換計画】の始まりだった。
その計画の阻止に「東亜重工製の合成人間」たちが動きます。
合成人間+AI+バイクでワンセット。主人公は合成人間の庚造一とAIのフユです。

〈N5SV〉人間をゾンビ化させるウィルス。
〈ドローン〉N5SVに感染したゾンビ。人間を襲う。
〈ドローン禍〉集団ドローン化した状態を指す。パンデミック。
〈技術文化遺産復興財団・DRF〉人類総改換を計画。
〈公衆衛生局・CEU〉DRFの強制執行部隊。疑似N5SVを使って肉体強化させている。
〈東亜重工〉製造を主とした民間総合会社。

N5SVは火星で発見された寄生植物の雄。地球で発見されたN5SV耐性体は寄生植物の雌。
受精すると発芽して〈復物主〉へと成長する。
FDRの総主・ニアルディはこれを利用して理想の人類社会を作ろうとしていた。

〈逆相写像重合体〉花粉。雄性配偶体。吸収した物体をコード化して再構築する。
〈胚珠〉火星で発見された微生物。雌性配偶体。N5SVのこと。
〈復物主〉思念が具現化する植物。

地球から分離した〈復物主〉は新しい大地となり、多くの命を乗せて宇宙を漂流する。
DRFのニアルディが支配する独裁社会の中、造一たちは時間を飛んで到着。
出会った〈復物主の子供〉フニペーロを守りながらニアルディと戦い、倒すのは何百年も先になる。平和を迎えた〈復物主〉と人々は、宇宙のひとつの星として生き続けるはずです。

👆ここで押さえておくポイントは
【東亜重工】…有能な人材を使っている優良会社でした。昔からいい仕事をしていたようですね。本社爆発しちゃったけど会社と技術は未来に受け継がれます。
【ガウナ】名前は違いますが、ドローン・復物主のこと。宇宙植物だったんですね。今後は人間をどんどん吸収していって未来の姿になるのでしょう。




↓N5SVの感染を免れた人間たちが復興。
2.abara アバラ

検眼寮によって黒奇居子を移植改造された駆動は組織を脱走。一般市民にまぎれて隠れて暮らしていた。しかし、一般に白奇居子に変化する者が現れて人間を襲っていることを知ると、黒奇居子を発動させて戦いに挑む。
決戦の大爆発で、一部の人間と白奇居子は宇宙に放出されます。

💡予想
黒ガウナは未来の〈珪素生物〉へ派生するのではないかと思われます。

〈検眼寮〉政府の組織。奇居子を戦闘の道具として実験・使用している。
〈白奇居子〉人間を食べて成長する謎の生物。胞という鎧のようなもので武装する。
〈黒奇居子〉人間の実験によって作られた人工のガウナ。

宇宙空間をさまよっている白奇居子は、遠い未来に地球に落っこちてきます。
シドニアの歴史にありました。




↓地上から白奇居子が消滅後、生き残った人類が作った世界。
3.NOiSE 【全1巻】


刑事の裾野 結(むすび)は、連続する児童誘拐事件の捜査中に「教団」の存在を知る。
彼らは殉教に必要な珪素系の肉体を完成させるために、子供を使って人体実験を行っていた。教団のたくらみを阻止するため、結は行動を起こす。

〈統治局〉政府のようなもの。
〈珪素〉シリコンのこと。
〈教団〉ネットのカオスエネルギーを利用して肉体の珪素化に成功。
〈ネットスフィア〉ネット管理組織。ネット端末を移植していない人間を排除する。
〈セーフガード〉ネットスフィアが使用する人体改造された珪素系戦闘員。

👆ここで押さえておくポイントは【珪素生物の誕生】と【ネット端末移植】です。
…裾野結の珪素改造された姿が駆動電次に似ていることから、ベースは黒奇居子だと思われます。そして生き延びた駆動電次が退治していた「異相協会」は、統治局・教団・ネットスフィアに枝分かれしたのではないでしょうか。

その後の結は、統治局とネットスフィアによる管理された世界で30世紀以上生き続ける。コントロールを失ったネットスフィアが〈建設者〉を使って都市を無秩序に増設してゆく様を見続けていきます。…1世紀以上人間を見かけていないところで幕を閉じる。




↓統治局とネットスフィアによる管理が失敗した地球
4.BLAME!


統治局とネットスフィアによる管理世界は〈ネット端末遺伝子〉を持つ人間のみが生存を許されていた。ゆえにネットの機能は〈ネット端末遺伝子〉からのアクセスのみ指令を発することができる。しかし珪素生物からの感染症で〈純粋な人間が使用するネット端末遺伝子〉は汚染され失われてしまった。ネットシステムの中枢はアクセスされないまま放置、衰退し、制御を失ったシステムは暴走し続けている。

エージェント・霧亥は、
世界を正常にもどすために感染前の〈ネット端末遺伝子〉を持つ人間を探して旅を始めた。

〈霧亥〉ネットスフィアがセーフガードを作るより前のガード。人間時代は刑事。
〈シボ〉科学者。霧亥と共にネット端末遺伝子を探す。
〈サナカン〉少女を装ったセーフガード。後に統治局の依頼でシボをガードする。

👆ここで押さえておくポイントは
〈ネット端末遺伝子を持たない人間〉を排除し続ける〈セーフガード〉です。
決定されている〈規約〉なので、統治局もネットスフィア上層部も手を出すことができません。排除するだけのための〈駆除系〉なんてものも作り出しています。

〈レベル9〉感染前の人間の遺伝子情報を転写した「胚」を持つ少女型のシボ。

この「胚」を霧亥は護り続ける。
未来では感染していない〈ネット端末遺伝子を持つ人間〉を、新たに誕生させることができたようです(回想シーンのみ)

都市の重要拠点は東亜重工製です。やっぱりいい仕事してました。老朽化してたけど。


新装版 ブラム学園! 弐瓶勉フルカラー作品集【全1巻】
作者によるBLAME!のパロディと短編集。
単行本「ブラム学園!アンドソーオン」に〈つむぎ、「ブラム!」にハマるの巻〉が加筆されたものです。ファンとしてはこちらを購入したいところですが、金額が倍以上します。




↓「BLAME!」のネット端末遺伝子からのアクセスで都市の暴走は止まったようです。
その後の中枢は隔離され、建築者の暴走で作られた都市は遺跡となっています。
5.人形の国


人々が住む人工天体アポシムズの表面は極寒で空気が薄い過酷な環境だ。
人形病という病。人間を殺す自動機械。帝国の圧政。安心して暮らすことが出いない世で、さらに謎のテクノロジーを巡って戦いが始まる…ような…まだ連載中です。

〈人工天体アポシムズ〉地球周囲の構造物のこと。
〈人形病〉人間が機械化してしまう病気。

💡予想
人形病は逆相写像重合体が影響しているのかも。
今のところ名前が出てこない〈逆相写像重合体〉は、吸収した物体をコード化して再構築するものです。5巻でなぞ解明の伏線がでていたので今後が楽しみです。

〈中央制御層〉統治局・ネットスフィアの中枢。隔離されています。
〈遺跡層〉建設者が増設しまくった都市。
〈正規人形〉黒ガウナ系。転換の光で繋がった宇宙空間には何があるんでしょうね。
〈転生者〉正規人形コードに適合した人間。
〈自動機械〉セーフガードの駆除系。建設者改訂版。人間サイズの衛人とか。

💡予想
アポシムズ表面に住んでいる人々は「BLAME!」の東亜重工AI:メンサーブが再生させた人間ではないかと思っています(あの時の争いが敗戦と伝わったのでは?)
もしくは「バイオメガ」の〈復物主〉から戻ってきた可能性も。この先で解明してくれたらいいな…

いずれにせよ「シドニアの騎士」に続くのが分かっていると、これがあんな風になるわけかとワクワクして読むことができます……が、好みから外れて途中で読むのを断念🙏




6.シドニアの騎士


太陽系はガウナによって破壊され、脱出した人類は移民惑星を探しながら宇宙を放浪し千年を過ぎていた。しかしガウナもまた宇宙を漂流し続け、人類の脅威は続いている。
対抗するのは人型戦闘兵器〈衛人〉…解明されていないガウナの生態に振り回され、操縦士たちは次々に死んでゆく。

〈シドニア〉移民船
〈衛人〉人型戦闘兵器。
〈谷風長道〉衛人の操縦士。シドニアの人々とは隔絶された地下で育った謎の少年。

ガウナ攻略の研究と並行して、ガウナと人間の遺伝子を使った〈つむぎ〉が生み出される。外見はガウナのお姫様。サイズは衛人。中身は谷風が大好きな健気な少女です。
この、つむぎを中心にした異様なラブコメが結構楽しい。
そしてライバル企業に押されていましたが、新兵器開発にはやっぱり東亜重工!

👆ここで押さえておくポイントは
「アバラ」で宇宙に放出したガウナが、忘れられた頃に地球に落っこちてきたのが始まりです。その後に戦いが勃発して地球は真っ二つになっていました。
…地球はもう無い😭



【まとめ】

1.バイオメガ ガウナ誕生・東亜重工の人造人間。
………ここで99%リセット………
2.アバラ ガウナは決戦後宇宙へ放出。
………ここで99%リセット………
3.NOiSE ネットスフィア。珪素生物。地球が舞台。
4.BLAME! NOiSEから数千年後。東亜重工の痕跡。
5.人形の国 BLAME!の世界の表面が舞台。
6.シドニアの騎士 地球が破壊される。宇宙が舞台。

…少しの生き残りを残してのリセットしかない…ワンワールドは無理やり過ぎたかな?😅



ここまでレポートしておいて何だけど、ガウナと珪素生物の関係性がだんだんわからなくなってきた。珪素生物の感染症の実態もわかってないし、ネットのカオスエネルギーって何よ……と思いながら雰囲気で流している状態です。あと何回読めば理解できるのでしょうか……へへっ